平成27年度東京法曹会幹事長 日向 隆

「縦糸と横糸が織りなす力強い組織を目指して」

当会は、昭和7年に発足し、今年で齢83を数えますが、今や750名を超える会員を擁する東京弁護士会内有数の会派となりました。当会が発足した昭和7年といえば、未だ弁護士自体が司法省の監督下におかれていた時代であり、その後の弛まぬ当会先達による精力的な活動などがあって、漸く昭和24年に弁護士法が改正され、それまでの悲願であった弁護士自治を獲得するに至ったものであります。

そうした中、戦後70年を迎えようとする本年2月に実施された東京弁護士会の役員選挙において、弁護士会への加入につき任意制導入を公約に掲げる候補者が現れました。いうまでもなく弁護士がその使命を全うするには国家機関による監督から独立していることが不可欠であり、弁護士による自治を実践するために監督権限が与えられた弁護士会への強制加入制度が定められたという経緯を蔑ろにしたものであり、自ら弁護士自治を放棄するに等しい信じ難い意見です。

もちろん司法改革によって弁護士人口が急増し、弁護士の職域も広範なものとなり、任期付公務員や企業内弁護士など、従来の訴訟活動を中心とした弁護士像だけでは業務内容を語り尽くすことができなくなってきていることは事実です。しかしながら、いかに業務が多様化しようとも、私ども弁護士は、単なる「法律屋」であって良い筈がなく、法曹三者の一翼の担い手として、基本的人権の擁護と社会正義の実現を図るという崇高な使命を国民から託された「法律家」であります。

私は、複雑化、国際化した時代状況の中にある今だからこそ、今一度創立の原点に立ち返り、弁護士としての矜持を保ちつつ、当会の歴史と伝統を礎として未来に向かって力強い組織となるべく、東京弁護士会を支える有力会派としての当会のさらなる発展に尽力したいと強く望んでいます。

そこで、このような観点から、本年度は、先輩方が築き上げてこられた礎の上で今一度地歩を踏み固めつつ、世代を超えた縦の糸と世代内の横の糸とが織りなす強き絆を作り上げ、その絆がより強固な力を発揮できるように会員の顔が見える組織にするため会員相互の親睦を一層深め、会員一人一人が満足を実感できる組織にしてまいる所存です。

以上の目標を実現するための会務執行の具体的方策として次の3本を柱とします。

1 先輩・ベテラン会員から後輩・若手会員への継承

当会には多様な分野で活躍され、また専門家として深い識見を持った先輩・ベテラン会員が数多おられます。先述しました弁護士自治の理念とその真の意義とを先輩・ベテラン会員から後輩・若手会員へ継承していただくことは勿論のこと、深い教養と知識、実務における高度な実践的能力等が無理なく継承されるよう、ベテラン会員と若手会員との交流を濃密にし、深化させるための方策をとります。これには、親睦行事などへのより参加しやすい仕組み作りや、研究会や交流会の開催などを企画し実行します。

2 同期世代の紐帯の強化

特に60期以降の会員にあっては、会員数の急増に伴い、同期といえどもお互いのことを知悉しているとは限りません。現在、東弁ではクラス別研修制度という、新規登録弁護士をクラス別に編成して行う研修を実施していますが、当会においては、対象とする修習期の幅を拡げながら、職場や業務内容が異なるが故に普段は交流の少ない同期の繋がりを強化するため種々の点から支援を図りたいと思います。その具体策としては、同期会の開催を早い段階から開始します。そして、予算においては冗費を省きつつも、組織としての強化と深化を図ることを目的に、組織強化に力点を置いた予算措置を講じます。

3 当会からの情報発信力のさらなる強化

当会は、有形の媒体として「東京法曹会ニュース」を発行し、広く会員に情報を発信しています。本年度は、この東京法曹会ニュースを会員にとってより親しみやすい媒体とするほかに、web上の情報発信力を強化します。具体的には、当会ホームページのアップデートを迅速にして当会の行事告知や実務研究会の発表内容をアップするとともに、メール等を利用した情報の発信にも努めます。そのためにも現在のところ僅か25%程度にとどまっている当会会員のメールアドレス把握率をより高率にし、他方で会員に対する情報提供サービスの充実と親しみやすい広報に努めます。

以上のほか、私ども執行部が取り組みたい課題、取り組むべき課題は多々ありますが、それらの諸課題に積極果敢に迅速に取り組んでまいる所存です。一年間どうか会員の皆様の力強いご支援ご協力を切にお願いする次第であります。